沖縄といえば、美しいビーチをイメージするだろうか。それとも沖縄料理?賑やかな歓楽街?でも、この沖縄市前島というエリアは、町はずれの港町。ビーチもなく、立地もあまりいいとは言えない場所……。
だけどこのホテルには「アート&カルチャー」を軸にたくさんの人々が集い賑わっていた。旅行者、沖縄のローカル、そして働くスタッフの待合室となっている「ホテル アンテルーム 那覇」。
今回は宿泊部のスタッフを募集している。アートに興味がある方はもちろん、夢や目標がある方にとって、このホテルは最高の職場になるだろう。インタビューを通じてそう確信した。仲間の挑戦を後押ししながら、自身も挑戦し続ける社員のみなさんが、生き生きと「自分の仕事」を語っていたからだ。
「提供したい体験」は、引き継いでいける
ホテル アンテルーム 那覇立ち上げの時、企画・設計・運営のチームが集まって企画会議が行われた。
「まだ基礎設計も上がっていないタイミングでした。そこで僕が言ったのは、『まず、どんな宿泊体験を提供するかの話をしませんか?』ってこと。
立派な箱だけ作っても、3年後とかに企画者の心意気とかが全く現場の運営者に落ちていないなら、その議論は無駄になってしまう。でも『こんな宿泊体験を売りたい』っていう話なら、引き継いでいける。だから、唯一無二の宿泊体験を企画したかったんです。」
そう語るのは、「ホテル アンテルーム 那覇」の運営会社である沖縄UDS株式会社の立ち上げから携わっている、山森さん。同施設の支配人を経て、23年4月から全拠点統括となる。UDS株式会社は、全国各地に様々なブランドのホテルを展開し、まちづくりを行う会社だ。
実は、「アンテルーム」を冠したホテルは京都の九条にある「アンテルーム京都」が1施設目だ。「アンテルーム京都」を起点に街が発展していくのを貴重な成功事例と捉えていた山森さんの発案で、那覇のホテルは「アンテルーム」ブランドで運営することが決まった。同ブランドのホテルを作るのは、UDS株式会社としては初めての試みだった。
「アンテルームのコンセプトは『アート&カルチャー』です。アートは現代美術ですが、はっきり言ってこれだけで、このエリアにお客様を呼べるとは思ってなかった。なのでアートを基軸にしながらも、カルチャーの部分を全面に打ち出して、沖縄に来る旅行者と、現地の人と、ホテルスタッフを介したハブになるコミュニティを提供することを目指しています。」
ホテルに、地域に、賑わいが生まれる
アート&カルチャーを軸に宿泊体験を考えてきた3年間、行ってきたイベントやギャラリーの企画は、沖縄に還元できるものが多かったという。
例えば館内で行う、インキュベーションのギャラリー展示。いわゆる沖縄のアーティストの応援枠だ。沖縄県立芸術大学の学生さんや、アルバイトの側ら制作活動を続けている方に直接声をかけ、ホテル側がサポートして館内での展示を行う。沖縄には発表の場が少ないため、アーティスト達にとってホテルでギャラリーを開催できることは、大きなモチベーションになるだろう。ホテルに来た旅行者も、現地アーティストの作品を鑑賞することができ、ホテルに賑わいが生まれる。これこそがまちづくり、と言える。
山森さんは、「本物のアートと沖縄のカルチャーを感じられる企画、そして運営する人の力で、この場所にさらに活気を生んでいきたい」と言う。
ぶれないコンセプトが、感度の高いゲストにとって、沖縄に来てホテル アンテルーム 那覇に泊まる理由となるのだ。「毎回行くたびに刺激をもらえたり、知り合いが増える」「泊まると、何かしら発見や出会いがある」。そんなことが起こるホテルでありたいと、展望を語った。
自分の「好き」を掛け合わせて
山森さんに、ホテル アンテルーム 那覇で求めるのはどんな人材か聞いてみた。
「僕がここで働く方達に求めている唯一のことは、『ホテルマン×〇〇』です。ホテルの他にもう一つの軸を持っていてほしい。
正直、ホテルで働くことって誰でもできると思います。例えばコンビニで働くことや運送業で働くことと何も変わらないし、どれも素晴らしい。ホテルで働くことは特別な仕事ではなくて、むしろルーティーンワークも結構多いです。お客様と触れ合うのが好きな方は多いですが、それだけじゃ、人ってなかなかモチベーション保てないですよ。」
「だから、ホテルで接客しながらホテル アンテルーム 那覇っていう土壌を生かして、自分が好きなことをしてほしい。ホテルマン×〇〇(自分の好きなことや夢)を会社は応援するし、可能であれば仕事としてやってほしいって思っています。」
この働き方は、与えられた仕事を100%でこなしながら、やりたいことの実現のために150%で努力しなくちゃいけない。けれども、そうすることで必ず内面が豊かになるし、自分の好きなことが仕事を通じて沖縄や会社に還元されることこそがやりがいになるんだと、山森さんは力強く語った。ホテル アンテルーム 那覇で働くスタッフが、ユニークに輝いているように見えたのは、この風土があるからなのだ。
そんな風に働いているスタッフを、山森さんは誇らしそうに紹介してくれた。例えば、県立芸術大学を卒業し、ホテル アンテルーム 那覇に就職した崎村さん。染め物の作家活動をしながら働いていた。自分の作品を見てほしいという思いで、「スタッフの休憩室に自分の作品を置いてもいいか」と掛け合ってきたこともある。そんな崎村さんは働きながら「沖展」という沖縄のデザインコンペティションに出場し、見事入賞を果たした。
そしてチーフ兼アートキュレーターの﨑原さんとアシスタントマネージャーの栢野さんも紹介してくれた。このお二人には、直接お話を伺った。
沖縄生まれのアートキュレーター
﨑原さんは、沖縄生まれ沖縄育ち。ホテル アンテルーム 那覇オープン当初から、アルバイトとして働いていた。入社10ヶ月後に、周りの社員さんからの薦めやサポートもあって社員となり、現在はホテルスタッフとアートキュレーターを兼任している。社員になって、どんな変化があったのだろうか?
「仕事の幅がさらに広がったのはよかったなと思っています。外部の方とのやりとりも任せてもらえるようになり、責任感を持ってアートキュレーションの部分も推し進めていけるようになりました。」
﨑原さんは元々、作家活動やアートの勉強をしていたわけではなかった。ホテル アンテルーム 那覇での展覧会の運営や企画展の仕事は「常に新しい発見や学びがあって、目まぐるしい毎日です!」と笑顔で語る。ホテルの仕事に関しても未経験だったが、同じく学びが多くあり、やりがいを感じているそうだ。アートに仕事として携わるようになってからは、プライベートでもアート鑑賞するようになった。
「オンラインスクールでアートの勉強をしたいな〜なんて思うんですけど、その時間を業務内で捻出するのはなかなか難しいので。勉強を兼ねて、プライベートで展覧会やアート作品を見に行ったりしています。
アートキュレーションを担当するようになってからは、美術に関する考えが変わりました。今までは見た目の美しさだけを捉えていましたけど、作家さんの考え方や、表現したいものの背景や過程も考えるようになりました。あと、他の展覧会をみて『この企画した人たちどんなに大変だったんだろう……。』って感じたりすることもあります(笑)。」
やってみて分かる、企画の裏側の大変さ。﨑原さんの場合、ホテルで行う展覧会だからこそ、ホテルのメンバーに対してアートの価値を説明し、展覧会などの承認を得ることの難しさもある。アート搬入の日や展覧会初日の緊張感も、未だに大きくのしかかる。しかし、﨑原さんは新たな挑戦に前向きだ。
「ホテル アンテルーム 那覇は2023年で開業3周年を迎えますが、スタッフ一人ひとりのアートに対する理解・関心をもっと深めていきたいです。私自身も入社時は、アートの知識は全くなかったですが、今はアートに関する知識面のスキルアップに全員で取り組んでいきたいと思っています。実は他にもやりたいことが何十個もあって、困ってます(笑)。」
どんどんアイデアが浮かんでくると語る﨑原さんは、終始ハツラツとして輝いていた。
見たことのない社風
ホテル アンテルーム 那覇で働くスタッフは、非常にフレンドリーでありながら、付かず離れずの接客が心地いい。実はラグジュアリーホテルや大手のリゾートホテルでの勤務を経験してきた方も少なくないそうだ。それまでのホテルでは経験できなかった、アンテルームらしい接客や働き方に魅力を感じている。
最後に紹介する栢野さんも、とあるシティホテルから転職しホテル アンテルーム 那覇にやってきた。
「前の職場は部署の縦割りががっちり固定されていました。客室数も多かったので、フロントはフロントの仕事だけをしていて、出勤から退勤までひたすらチェックインを繰り返す日々に、モヤモヤを感じていましたね。」
そんな時ホテル アンテルーム 那覇と出会い「ホテルマン以外の強みを持つことを推奨する」という社風に、ビビッときたそうだ。
入社後は前職の経験をフルに活かし、おもてなしの部分をアップデート。「おもてなしは楽しみながらやるのが一番!」という栢野さん。例えばこんな風に、チームメンバーにホスピタリティを伝えてきた。
「ゲストが喜んでくれる方法を、楽しみながら一緒に考えていくのが大切です。僕から『このゲストにはこれをしなさい』というのではなくて、『このゲストは女性で、年齢はこのくらいなんだけど、どんなサプライズ準備しようか?』など、メンバーと一緒に想像します。メンバーはその大切さをしっかりと汲み取ってくれて、自主的におもてなしをしてくれるようになりました。」
今、栢野さんは「エコ隊長」と呼ばれ、ホテル内のエコアクションを着実に実行している。かつては他ホテルでマリンアクティビティスタッフを経験していたこともあり、栢野さんは大の海好きだ。プラスチックゴミの削減やウォーターサーバーの導入など、海を守ることにつながる行動に、仕事を通じて取り組んでいる。
あなたの叶えたい夢が、ホテルの活気を作る
ホテル アンテルーム 那覇には「自分のことよりも、まず相手のことを考えるスタッフが多い」と語る栢野さん。ホテル アンテルーム 那覇は2023年から、ホテルスタッフの部署の縦割り制度が無くなった。フロントスタッフとレストランスタッフが、お互いの状況を判断して柔軟に対応する。
フロントが混雑して、並んでいるお客様のケアまで手が回らない時には、さっとレストランのスタッフが声をかける。逆にレストランが混み合っていたらバッシング(食器を下げること)やお会計のサポートに入る。清掃に関してもヘルプに入ることもある。やらされているというより、自主的に動いている人が多いのだそうだ。
それはきっと、一緒に働くメンバーへのリスペクトがあるからなのだろう。
最後に栢野さんは過去の経験を振り返り、本記事を読む人へ向けてこう話す。
「前職では、僕は『やらされている感満載』で、機械のように動いていました。でもここでは、ホテルの業務をしながら、やりたいことや自分の成長のために目標設定をして取り組んでいける。夢や目標がない人でも、ホテル アンテルーム 那覇に来ればきっと何か感じるものがあったり、それを見つけられるかもしれません。
いろんなホテルを見たり働いたりしてきましたが、こういったところは他のホテルにはない、沖縄UDSならでは、ホテル アンテルーム 那覇ならではの良さだと思います。」
お互いの目指すものを尊重し、応援し合える職場。業務をしながら夢を叶える。言葉でいうほど簡単ではないはずだ。でも、辛い顔をしている人はひとりも居なかった。仕事を「自分ごと」として捉えているスタッフひとりひとりの魅力が、沖縄の待合室「ホテル アンテルーム 那覇」を唯一無二の場所にしている。あなたならホテルマンという仕事に、何を掛け合わせて働きたいですか。