長崎県、五島列島の福江島に2022年8月にオープンした「カラリト五島列島」。福江港から車を15分ほど走らせたところにある、アーチ型の大きな窓が特徴的なホテルだ。
ここでは、五島の豊かな自然と穏やかな島の人たちに囲まれながら「飾らない自分にかえる、晴れやかな時間」を過ごすことができる。
窓ガラスの中はカフェレストラン兼レセプション。足を踏み入れた瞬間、開放的でゆったりとした気持ちになれた。
五島の透き通る青い海が、目の前に広がっている。
今回は、この晴々とした時間をゲストと共に創り上げる「正社員スタッフ」を募集している。レストランのホールスタッフも、積極的に探しているそうだ。
新しいことに挑戦したい前向きな人や、現状のライフスタイルに違和感や不安を抱いている人にぜひ、この記事が届いてほしい。
健やかなライフスタイルを描きたい
「九州のためになることがしたい」株式会社カラリト代表の平﨑さんは、東京の不動産開発会社に勤めていた時からその思いを抱いていた。
「前職時代、のちにカラリトを一緒に立ち上げることになる山家君から『福江島に魅力的な土地があるんですが、投資しませんか』という話が舞い込みました。」
「僕は熊本出身なんで、個人的にはいずれ九州に戻って、何か九州の活性化につながるような不動産の仕事がしたいと思っていたんですよね。」
その足掛かりになるようなプロジェクトだと感じ、社長も連れ出し島へ足を運び、企画書を書いて提案したものの、結局話はまとまらなかったそうだ。
「それで僕が悶々としていたところに、山家君から『もう会社辞めて一緒に会社作って、運営しよう!新しいライフスタイルの文化をつくろう!』って提案をもらって、即座に辞めることを決意しました。妻に内緒で住民票も先に移しちゃって。ハチャメチャですよね(笑)」
平﨑さんは、前の会社で不動産開発を通じ都市が魅力的になっていく一方で、それを見ている自分の中ではどこか生きづらさを感じることもあった。
事業の意義よりも利益率や生産性を高めることを優先されたり、「隣のデスクの人と同じような人生を歩むのかな」という漠然とした不安を抱いたこともあったそうだ。
「人生を選択できる幸せというか、そういう健やかなライフスタイルを描きたいよねって。九州で、そのライフスタイルを作ってみたいなという思いもあり、五島でのホテルの運営を決めましたね。」
島内に巡る、好循環
平﨑さんから見て、カラリトや五島はどんな場所ですか?と聞いてみた。
「五島には、損得勘定で動く人があまりいない。誰かが喜ぶのは自分にとっても喜ばしいことだと考えてる人が多い気がする。」
初めて来た人も「どこか懐かしい」と感じる親しみやすい雰囲気が、五島にはある。カラリト五島列島においても、そんな心安らげるステイを実現しているのだ。
例えば客室も作り込みすぎず「暮らしのための部屋」というイメージ。日常の延長線上にありながら、でも、どこかいつもと違う、帰ってきたくなるようなホッとする空間だ。
さらに、平﨑さんは市街地の居酒屋さんに「カラリト」の名前でキープボトルを入れていて、ゲストに「よかったら飲んできてください」とオススメするそうだ。それ、すごくいいですね(笑)
「現地の良さが詰まってる居酒屋とかに行ってもらって、大将と話をするみたいな体験があると、地域や人の良さを知ってもらえる。しかもキープボトルを飲み干したゲストが、次の見知らぬゲストのために、カラリトの名前でもう一本ボトルを入れてくれることもよくあるんです。まさに好循環ですよね。」
「こうして、カラリト五島列島のスタッフや島の人とも顔見知りになることで、心理的なコミュニティができていく滞在になる。実家に帰るような感覚で、またこの場所をリピートしてくれる人もいる。結果的に五島を好きになったきっかけがカラリトだったっていう、好循環が生まれるんじゃないかなと思ってます。」
いい仲間と出会える場所
五島は人と人との繋がりが実現できるような場所だ。
カラリトの人たちは、そんな繋がりを感じてもらうためにどんな働きをしているんだろう。
メンバーを束ねる支配人の川村さんは、代表の平﨑さん曰く「人に寄り添うことができて、誰一人として置いていこうとしない。皆んなにストレスをかけるのではなく、器の大きさで引っ張っていく人」だそうだ。
実際に川村さんに取材して確かに、こちらの話に真摯に耳をかたむけ、安心させてくれるような人柄を感じた。
五島には孫ターン(孫が祖父母の住む地に移住すること)でやってきたという川村さん。大手カフェチェーンで店長の経験はあったものの、ホテルは未経験だった。
支配人としての仕事は「常に歯車の中心にいること」。社内の人と人の間を取り持つ。初めての職種、初めてのポジションだが、「私にできることはなんだろう」と日々考えながら働いているそうだ。
「どこの部署にも顔を出します。時には清掃チームにも入ってフロントにも入って業務をしたりするし、アルバイトさん含めて全員と面談したり、悩み相談も受けたりします。」
支配人との面談って緊張する…と個人的には思っていたが、川村さんになら、家庭の事情や身体の悩みなども打ち明けやすそうだ。
川村さんに、カラリト五島列島で働く人たちのことを教えてもらった。
「おしゃべり好きな方は多いかなと。例えば、清掃チームにアルバイトで入ってくれている地域のお母さんが、仕事終わりに館内のカフェでお茶して帰るみたいなこともあります。
『ハーブ農園をやりたい』というスタッフの一言で、清掃チームの方が苗などを分けてくれたり。仕事上では直接かかわりがあまりないセクションの人たちとも、垣根を超えて交流しているシーンがありますね。」
「カラリトでの仕事を通じて『いい仲間ができました』と言ってくれるアルバイトさんもいて、本当に嬉しく思ってます。」
カラリト五島列島での業務は、レセプションのメンバーがカフェの営業をしたり、レセプションから毎日一人清掃チームに入れるようにしたり、季節ごとの館内イベントに全部署の従業員が協力するなど、セクションの垣根は低い。
働くメンバー自体も、移住者ばかりでなく地元の方達も含めいろんな人が働き、方言も飛び交うような職場が理想なんだそうだ。
仕事内容にも人にも、幅広く関わることができるのは、仕事の面白みにつながる。
主客一体
続いてカラリト五島列島の接客について、大事にしていることを聞いてみた。
「もともと、私たちは『ホテル』を作りたいわけじゃないんです。目指しているのは、自分らしく、晴れやかな生き方ができる人を、ここでどれだけ増やせるか。」
「代表の平﨑がよく言う『主客一体』という言葉が、カラリトのサービスとして皆んなに根付いていると思います。ゲストとホストを分離させるのではなく、一対一の人という関係性。
来てくれた人に対して、どれだけ『自分にかえって』もらえるか、何を求めているのかを考えて、一緒に時間を作っていくということをしています。」
働く人にも、接客業の経験があれば嬉しいなというところはもちろんあるが、深くは求めていない。それは川村さん自身や他のメンバー含め、ホテル未経験者が多い中でも運営はできているから。それよりも大切なことがあるらしい。
「ちょっと厳しいことを言いますが、ここに逃げて来てほしくはないんです。自分の次のチャレンジを求めて来てほしい。自分に何ができるか分からなくても、とにかく挑戦したい!と思える人が向いていると思います。」
「あとは決まったマニュアルやルールはほとんどない状態なので、そう言った面も含めて楽しめる人と働きたいなと思います。」
募集してないポジションを作って採用してくれた
働いているメンバーは、チャレンジャーな人が多いようだ。
もう一人、前向きな挑戦心を持ってカラリトに入社した方を紹介したい。
セールスマネージャーを担当している、貞包(さだかね)さん。地元は佐賀県だ。東京で外資系ホテルの営業をしていたが、九州に帰って働きたいと転職を考えていたところ、カラリトの求人を見つけた。
平﨑さんや川村さんといった立ち上げメンバーが楽しそうに仕事をする姿に、貞包さんは率直に惹かれたそうだ。
「ホテルの立ち上げという0から1を作る大変な作業の中、建設作業に関わる方達にも温かい飲み物やお弁当の差し入れをしたりしていて。みんなで創り上げているという感覚と、それを苦ではなく楽しんでやっている姿を見て、『彼らと一緒に働きたい!』『僕もその一員になりたい!』と感じました。」
「実は求人を見た時、営業職の求人はなかったのですが、思い切って応募してみようと。面談の中で、共に働きたいという強い思いを伝えたところ、セールスマネージャーという、急遽つくったポジションとして採用していただけることになったんです。ありがたいですよね。そういった意味では、新しい挑戦もしやすい環境だと感じます。」
(写真提供・カラリト五島列島)
貞包さんもまた、「九州を盛り上げたい」と考えていたこともあり、カラリトのビジョンには深く共感したという。
株式会社カラリトは、カラリト五島列島の運営だけでなく、空き家を活用した滞在施設や飲食店の運営もおこなっている。その運営で出た利益の一部を、その地域の地域課題に投資する方針だ。
そしてこの運営×地域課題解決の取り組みを九州で10カ所程度作り上げ、九州を独自に輝いている場所にしていきたいというのが、彼らのビジョンである。
「カラリト五島列島を運営することによって観光の方が増えれば、地元のお店も盛り上がりますし、地域に雇用が生まれます。地域還元に興味がある方にとっても、面白い会社だと思います。」
挑戦意欲と九州愛のある貞包さん。入社後の現在も「九州をセールスする男」として、生き生きと仕事をしている。
「パリ、ニューヨーク、九州!って感じで、『九州』を世界の魅力的な観光都市と肩を並べる存在にしたいですね。」
今、心のどこかで、現状のレールに乗っかっていることへの不安や違和感を感じていたり、挫折や自分の弱さを知っている人。カラリト五島は、そんな人たちを受け入れ、挑戦させてくれる場所だ。
代表の平﨑さんは、インタビューの最後にこう締めくくった。
「そういう人っていっぱい居ます。でもそういう人は絶対伸びるから、一歩踏み出してくれた人が、輝く場所にしていきたい。」
文・ホテルみるぞー
写真・澤田直大