石川県金沢市。近江町市場から「いらっしゃーい!」と、活気ある掛け声が聞こえてくる。「金沢市民の台所」と言われるこの市場は、今となっては観光スポットでもあるけれど、地元の人や金沢の料理人たちも日常的に足を運ぶ。金沢の暮らしには欠かせない場所だ。
そこから3分ほど歩いたところに「LINNAS Kanazawa」はあった。
LINNAS Kanazawaの建物は、元々は美容の専門学校だった。リノベーションを経てホテルとして運営している。外観は、確かにどことなく学校の面影がある。
一歩館内に入ってみると、天井から吊るされたたくさんの提灯が目に飛び込んできた。この温もりある灯りが、日々ゲストを迎え入れているのだ。
今回募集するのは、LINNAS Kanazawaの正社員クルーとなる、フロントマネージャーのポジション。クリエイティブに自分のキャリアを描き、行動したい人。そしてホテルを起点に街の魅力を伝えることに興味がある人には、きっとぴったりな仕事だろう。
コロナ禍はチャンス
まずはLINNAS Design代表の松下さんにお話を伺った。
東京生まれの松下さん。以前働いていたホテルベンチャーの会社が金沢へ店舗出店したことをきっかけに、2017年ごろから出張で足を運ぶようになった。
地元のコミュニティにしっかり関わり向き合いながら、場を育てていたという。しかし、それは突如中断となった。コロナ禍によって、前会社の金沢店舗の撤退が決まったのだ。
「そのまま終わらせることもできたけれど、僕自身はこの街にすごく愛着がありました。事業の面でも、観光地としてのポテンシャルが非常に高いと考えていたので、『まだやれる』と思っていましたね。そこで不動産オーナーさんと交渉し、撤退したホテルの次の運営者として、LINNAS Kanazawaを始めることに決めました。」
コロナ禍で起業。しかも当時、甚大なダメージを受けていた観光業での起業とあって、周りからは当然心配の声も上がったらしい。しかし松下さんはそこに可能性を見出した。
「コロナ禍はむしろ、新しいことに取り組むチャンス。自分の中では好機を見つけられているけれど、他の人たちはまだ気づいていない。その差にもポテンシャルがあると感じました。」
窮地に立たされたところからがスタート
「逆境をチャンス」と捉えられる、松下さんの強いメンタリティの根底には、自身がバックパッカーとして世界中を旅した経験があるそうだ。
「世界64カ国を訪れたなかでは、窮地に立たされることもありました。あらゆる交通手段が絶たれて、どうしたら次の場所に進めるのか。ネットにも情報がない。そうなったところからが勝負!そこからが、旅のスタートなんです。」
「一般的には行くのが難しいと言われている場所でも、いろんな人に話を聞いて、助けてもらって次に駒を進めていく、みたいなことは何度も経験してきました。この『旅人マインド』が根底にあるんじゃないかなと思っています。」
旅人ならではの、粘り強く実行するマインドセットが、LINNAS Kanazawaを着実に前進させてきた。
チャレンジし続けた2年間
2021年4月に開業したLINNAS Kanazawa。この2年間を、松下さんに振り返ってもらった。
「この場所があったからこそ、色んなことにチャレンジできました。例えば、LINNAS主催で行ってきたイベント。イベントを打つこと自体を目的にせず、(イベントをすることで)社会にどんな価値を生み出すことができるかにこだわって企画してきました。コロナ禍だからこそ、新しい取り組みや価値観を打ち出すことで注目してもらえたし、我々の取り組みに賛同してくれる方達にもたくさん出会えました。」
例えばこんなイベントが行われてきた。北欧発祥のSDGsスポーツである「Plogging」。ゴミ拾いをしながらジョギングするアクティビティである。LINNAS Kanazawaでは、宿泊ゲストや地元の参加者を交えて、みんなで朝の金沢の街を走る。
観光客が増えると、観光客は街の人にとって「街を消費していく存在」と捉えられてしまうこともある。しかしこの取り組みを、LINNAS Kanazawaがイベントとして行うことで、観光客とも地域とも良好な関係を築くことができる。オーバーツーリズム問題に一石を投じる催しだ。
Hyggeなライフスタイルを体験できる場所
松下さんは、LINNAS Kanazawaを「宿泊施設ではなく、街のなかの小さな複合施設」と表現する。単なる宿泊機能に留まらず、先程紹介したようなイベントの開催や、シャアキッチンでの料理、フィンランド式のプライベートサウナ、ラウンジスペースで仕事もできたりと、様々な過ごし方ができる場所なのだ。
「私たちが考えるこれからのライフスタイル『衣食住働遊』を、この場所を通じて様々な形で提案しています。そんな滞在の軸となるコンセプトは”Hygge(ヒュッゲ)”。デンマーク語で『居心地のいい時間、ほっとする空間』というような意味の言葉です。」
松下さんは北欧のエストニアという国に住んでいたことがある。当時の暮らしと金沢の暮らしの共通点が”Hygge”だったようだが、日本でインテリアの文脈などで一般的にイメージされる「北欧風」とは違うようだ。
あえてHyggeをコンセプトとして設定している理由を聞いてみた。
「LINNASが北欧らしい内装であるとかではありません。例えば、シェアキッチンでゲスト同士で食材の交換をしたり、お酒のシェアをしたり。仕事の合間に街を歩くと、川や緑などの自然を身近に感じられたり。そんな時にゲストは『Hyggeを感じました』と教えてくれます。」
「日常にある豊かさって、当たり前であればあるほど感じられにくいものです。でも、Hyggeがコンセプトであることで、滞在の中でゲストがHygge(=暮らしの中の豊かさ)を見つけやすくなります。」
例えばワインやコーヒーのテイスティングノートのように、〇〇のようなフレーバーだと言われることで、飲んだ時によりその味を感じられることがある。コンセプトのHyggeは、言わば金沢滞在のテイスティングノート。ゲスト自身で感じ取りながら、旅を楽しんでもらえたらという思いの元、設定された。
ホテルが提供したい価値の解釈に、余白を持たせるコンセプトの在り方だ。
『面白い街』に、LINNASが旗を立てていく
松下さんに、LINNASの今後の展望についても聞いてみると「『LINNASがあるってことは、その街はきっと面白い』と思ってもらえるホテルブランドにしていきたい!」という答えが返ってきた。
「僕たちにとっての『面白い街』とは、深掘りしがいがある街。工芸や食、アートなど、切り口は色々あるのですが、何よりもその地域に住む人たち自身が街に誇りを持っていると、面白みを感じます。」
「例えば金沢はすごく職人気質な街という印象で、食も工芸も素晴らしいものが多く、街の人もみんな目が肥えている。でもその深い魅力は、街の外に出きっていないと思います。そこに深掘りしがいがあります。LINNASはただ泊まれる場所というより、街の魅力を伝えることができるリアルなメディア。街のディープな魅力へ通じる扉の鍵を、ゲストに渡す役割を担っていると思います。」
いつか世界中の『面白い街』に、LINNASが旗を立てていく。それを見た世界中の旅人が、その街の扉を開けにやってくるだろう。
街の扉を、開ける役割
LINNAS Kanazawaで活躍する、アルバイトクルーにもお話を伺った。ホテル業未経験でジョインした水(みず)さん。自身も旅行の際には、ライフスタイルホテルやコンセプトの面白いゲストハウスを選ぶことが多いそう。
アルバイトを探していた時、LINNAS Kanazawaではシェアキッチンやイベントなどを通じて、誰かと旅を共有できる空間が提供されていることに興味が湧いた。水さんは、積極的にゲストとのコミュニケーションを取るそうだ。
「LINNAS Kanazawaで働くうえで大切にしていることは、とにかく声をかけること。チェックインの時だけでなく、外出される場面などでも、一言でも言葉を交わすようにしています。
それから、おすすめのお店や場所をお伝えするときは、ただ店舗名を教えてあげるだけでなくて、このお店のこのメニューが美味しい!ここからの景色がいい!など、丁寧に詳細に伝えます。」
まさに先程の松下さんが言っていた、街の扉を開ける役割だ。時には海外から来たゲストの代わりに、レストランの予約電話をしたり、タトゥーがあっても入れる銭湯を探したりもしたそうだ。
「そのゲストの金沢滞在が、より良くなるためのお手伝いという感覚です。それは私にとってのやりがいですし、タスクというより楽しんでやっています。」
1Day 1Creation
LINNAS Kanazawaの現場では、水さんのようなクルーの働きで、常に良い変化が起きている。
「ホテルのフロント業務を経験した人にとっては、『こんなこともするんだ!』と感じることもあるかもしれません。フロントでチェックインの手続きをするだけじゃなく、例えばシェアスペースの掃除やイベントの企画まで行います。
それに、私たちのバリューには『1Day 1Creation』という言葉があります。日々のルーティン業務の中でも、新しい価値を生み出すアクションを起こすということです。だから、新しいことに挑戦するのが好きな人や、この『普通のホテルと違うこと』を楽しめる人は、LINNAS Kanazawaに向いていると思います。」
HUB!な人と働きたい
この記事の執筆者の私も、実はLINNAS Kanazawaで働く一員だ。私はフロント業務をしながら、SNS運用、イベントの企画運営、そしてこの「ホテル共創採用メディア」の編集長も担っており、夜に時間があれば金沢のバーで複業したりインフルエンサーとしてTV出演したりしたので、『普通のホテルと違う』のを体現していると思う(笑)。
最後に私から、LINNAS Designの社員として大切にしている精神と、この会社の一番好きな価値観を伝えたい。
まず、大切にしている精神は「Be HUB!」。地域やゲストとの繋ぎ役になろう、という意味だが、HUBはそれぞれ「Humble」「Unique」「Brave」の頭文字を取っている。
人にも自分に対しても、常に謙虚な気持ちで(Humble)、
自分らしさやLINNASらしさ、その地域らしさを大切に(Unique)、
そして勇敢にチャレンジする起業家精神(Brave)を持つこと。
特にBraveは重要だ。挑戦して、時には失敗もして、トライアンドエラーを積み重ねていく。そして成功した時こそ謙虚さを忘れずに、どうしたらさらに良くできるかを考える。
これらの精神が共通している人、こんな経験を経てきた方達と、一緒にLINNASを創りたい。
そして私が個人的に、一番好きな価値観は「家族的情味」。私は一社員だが、自身が給料で繋がっている雇われの従業員だと思ったことは一度もない。アルバイトクルーとも、私たちは兄弟姉妹のような感覚で応援し合い、支えてもらっている。家族のような人情味があるチームだ。
小さな組織だからこそ、王道のキャリアは決まっていない。それを不安に感じる人もいるかもしれない。代表の松下さんからはよく「キャリアは作るものです!」と言われるけれど、自分だけで頑張ってキャリア切り拓いてね、という意味ではないので安心してほしい。
それぞれが目指したい世界や、挑戦したい夢に向かって、対話を重ねながら一緒にキャリアを作っていくのが私たち。現に私は「ホテルマンを憧れのお仕事にしたい!」という夢を松下さんに語って入社し、今こうして採用メディアという切り口で、夢の実現に一歩近づくことができた。
クルーの成長は、LINNAS Designの成長に繋がる。LINNAS Kanazawaでの仕事を通じて、ゲストにとって、街にとって、そして私たちにとってより良い未来を、共に創っていきませんか。
文・ホテルみるぞー
写真・吉崎 努