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ホテル専門共創採用メディア Studio STAY は 「Behind the stay」をタグラインとしています。 ホテルが作っている宿泊体験の裏側を取材し、求人情報とあわせて掲載します。


しかし、宿泊体験を作るのはホテルだけではありません。

宿泊体験は、ゲストとの共創。ゲストが居て初めて体験が完成します。


「STAYを創るゲストの話」では、

「泊まる」の新しい楽しみ方を実践している

3名の方にコラムを寄稿していただきました。


それぞれが見出した宿泊体験の価値。

あなたもぜひ、次の旅やライフスタイルに取り入れてみませんか?

 

ーーvol.3を書いていただいたのは、「コジャ| ホテルで働くアーキテクト」さん。

一級建築士でありホテル運営会社に勤めているコジャさん。その傍ら、ご自身のホテルリサーチをアウトプットする場として、自宅のリノベーションプロジェクト「ジマルーム」を手がける。泊まったホテルの緻密かつ丁寧なスケッチは可愛らしくもあり、ホテル愛をひしひし感じ、毎回「いいね!」せざるを得ない。


そんなコジャさん流のホテルステイの楽しみ方をはじめ、ホテルをヒントに快適な住まいを作るにはどうしたらいいか、教えていただいた。


▲ジマルーム。これが自邸だなんて…!!



1、ホテルは最高のショールーム


ホテルに宿泊した時はほぼ必ず部屋を細かく調査、採寸、データとして残すようにしています。良いなと思ったことはもちろん、ダメだなと思ったことや、こうしたらよかったのに、という気づきも含めてメモを残します。建築、インテリアだけではなく、細かい備品やアメニティ、食事、スタッフのサービスだって気になればスケッチして残します。


記録に残すことやスケッチをすることが好きだということもありますが、滞在した体験をただの思い出で終わらせず、何か少しでも再現性あるものにしたい、という考えからホテルに泊まる際には少し時間を確保して作業するように心がけています。自宅に帰ってからはゆっくりと記録を整理、データ化していますが、沢山のホテルを体験・リサーチしていると色々と見えてくることもあります。日本に存在するホテルの数は現在約5.5万施設、客室の数は170万室を超えています。そのホテル、客室の分だけ多くの先人の知恵が積み重なり洗練されてきた空間だと考えると、とても効率の良いリサーチ方法だと考えています。


また、最近は働き方や住まい方が変容しつつある今、住まいとホテルの境界はゆらいでいるような気がします。ホテルが非日常の場所という位置づけではなく、もっと日常の延長のような親しみやすい存在に、逆に住まいはもう少し非日常感ある特別感ある場所になっても良いなと感じることがあります。昨今様々な価格がどんどん高騰していく中で、限られた予算の中で工夫を凝らしてつくる、という観点ではホテルも住まいも同じです。コンパクトな空間でも居心地良い場所をいかにしてつくるか?というテーマとして考えても、ホテルの客室はそのアイデアがたくさん詰まっています。"部屋づくり"として最高のショールーム体験をできるのがホテル客室なのです。





2、今日からできる”質の高い小さなくらし”


限られたスペースの住まいにおいて、不必要に広さを求めるのではなく質の高い暮らしが実現できるアイデアをホテル客室から学んだ事例からいくつかご紹介します。


A.カーペットライフ

ホテルでは当たり前のカーペット。住まいではメンテナンスの観点で敬遠されることも多いと思います。もちろん、しっかりメンテを考慮されたカーペットであることは必須ですが、いくつか良い効果があります。まず、家具がなくてもどこでも床で寛ぐことができるため平面を有効活用することが可能です。また、床中心で暮らすことが増えると目線が下がり、天井高さは変わらないのに相対的に高く感じることもでき

ます。(ちなみに、我が家で採用した「堀田カーペット」はオススメ商品です)


B.アウトベーシンスタイル

洗面スペースは必ずしも水廻りの個室に閉じ込める必要はありません。お風呂、脱衣所、洗面を全て個室として壁をたててしまうのではなく、洗面をリビング・寝室側に移動してしてしまう"アウトベーシンスタイル"が最近ホテルで良く見られるようになりました。理由はシンプルに空間の圧迫感を軽減することができるからです。コロナを経験したことにより、衛生面を気にするようになったことから住まいでも玄関付近にこのスタイルを採用し、すぐ手洗いができることを希望される方も増えてきたようです。


C.家具は低く設計する

一般的に決まっている家具の高さ寸法を疑うことも大切です。むやみに高い家具をレイアウトしてしまうと圧迫感が出てしまいます。使い勝手や収納についてはしっかりと検討しつつも、低めの家具を選ぶことができると、広々とした空間が演出できます。コンパクトなホテル客室でもこの考え方がうまく反映されている所は快適に感じることが多いです。


D.あえて小さな部屋を選ぶ

一般的に必要だと言われている住まいの平米数だったり、nLDKという指標を疑うべきだと感じています。不動産業界は広さである程度単価が決まることも多いので、単純に広ければ広いほど価格は上がっていきます。私が住まいを購入するときに探しているエリアの物件が80〜85万/平米程度でした。単純計算ですが、5平米(約3畳)程度小さい物件を選ぶと400万安くなるいうことになります。本当にその5平米は必要でしょうか。ただ狭いだけだと不便だと思いますが、先述の通りのアイデアを実践したり、都心近くに住んだりする立地の費用に充てがうなど質の高い暮らしを選ぶことも考えてみてほしいな、と思います。



▲カーペット



▲アウトベーシンスタイル



3、見た目以上の”ホテルライク”を求めて

ここ最近”ホテルライク”という言葉を良く目にするようになった気がしたのでGoogleで調べてみると、なんと5年前に比べて4倍程多く検索されていることが分かりました。住まいを選ぶとき、設計するときのイメージとして検索されることが多いのだと推測できます。実際検索してヒットした記事に書かれている内容を見てみると「統一感のある色味」「アクセント壁をつくる」「照明にこだわる」「オシャレなアートを」等々、どうしても見た目に関わるもので且つ少し抽象的な表現が多くなりがちでした。


もちろん、インテリア計画において見た目はとても重要ですが、質の高い空間づくりを目指すときはもっと複雑で繊細な検討が必要になります。見た目だけのホテルライク(ホテルっぽい)ではない、もう一歩踏み込んだレベルでのホテルらしさ、ホテルノウハウの知見が広まっていくと良いなと考えています。ホテル滞在で詳細までメモを取る意図はまさにここに有ります。ただのイメージだけであれば写真を撮れば良いのですが、そこからもう一歩踏み込んで寸法や構成、その時感じた感情なども含めて記録することで、見た目だけはない本質的な質の高い空間づくりをリサーチすることができると考えています。


▲訪れたホテル平面図のデータ一覧。



4、「ジマルーム」及び「コジャ」の活動の紹介

自分は(コジャ)は元々、建築設計事務所に勤めていましたが、現在はホテルの運営側へと立場を変えて仕事をしています。設計者ではない立場になることで新しい視点に気がつけるようになりたいことがキッカケでした。プライベートでも時間ができたら様々なホテルを訪れることを継続しています。


ここ数年そんな生活をしていて、良い体験というものは何か決定的な要素1つで成り立つものではなく、小さなサービスの積み重ねでできているのだと思うようになりました。そしてそれは、意識しないと思い出すことはできないような細かい要素も含まれています。「顔も覚えていないけどなんだか丁寧なスタッフだったような気がする」「細かい味を思い出せないけど満足したことは確かである」のように、曖昧にしか覚えていないとしても、そう思わせるための小さなサービスはいくつか存在し関連し合っていたはずです。日々のホテルリサーチについて細かすぎることをメモに残す意味にも納得できるようになり、より一層磨きがかかっています。


そんな様々なホテルリサーチをアウトプットする場として、自宅のリノベーションプロジェクト「ジマルーム」を昨年つくってみました。上記で記載したような”質の高い小さな暮らし”を目指すべく、ホテルに実際に複数のホテルに泊まりながら図面を描くなど、検討を重ねたプロジェクトです、ぜひご覧くださいませ。今後も"ジマルーム"に住みながら、そしてまだ見たことないホテル体験をリサーチしながら、ホテルと住まいの間を考えていきたいと思います。


<参考リンク>

コジャ:https://lit.link/koja#

ジマルーム:https://rntja.com/JIMAROOM


▲ジマルームHPより



▲ジマルームHPより




【STAYを創るゲストの話 vol.3】
コジャ| ホテルで働くアーキテクト

2022.03.22

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